全科協ニュース,Vol.32. No.6(通巻第187号)「音声・電子ガイド」特集  掲載
すべての人にやさしく,親しみやすい博物館をめざして

ミュージアムパーク茨城県自然博物館
高橋 淳・廣瀬 孝久
1 はじめに
 当館は、茨城県南西部の岩井市に平成6年に開設された自然系の博物館である。当館では、健常者・障害者の分け隔てなくあらゆるタイプの来館者に対して、快適な利用空間を提供するのはもとより,知的欲求の充足感を共有できるユニバーサルデザインの展示ならびに情報提供をめざしている。当館では、バリアフリーへの対応の一手段として,平成11年に視覚障害者対応型音声ガイダンスシステムを導入した。ここでは,システム導入の経緯や特徴等について述べる。

2 システムの導入にあたって
(1)機器の選定
 音声ガイドの方法にはいくつかの方式があり,それぞれ違った特性をもっている。当館では,視覚障害者を主な利用対象者としたうえで、下記に留意しながら機器の選定を行った。
視覚障害者が主体性を損なうことなく行動できるよう、館利用に必要な施設・設備の案内を行えるシステムであること。
展示室の趣旨や展示そのものについての展示解説を、システムを介して充分に行える方式であること。
ユニバーサルデザインの観点から、単に視覚障害者のためだけではなく、これを使用することによって健常者も視覚障害者も博物館利用の楽しみを共有できるシステムであること。
来館者多数時のざわめきや、音響を伴う展示物等、さまざまな音が混在している館内で明瞭にガイドが聞き取れ、また、他の来館者には不必要な音が流れないよう、イヤホンや手元のスピーカーによって音声ガイドを聞き取る方式であること。
 機器について調査を行った結果、これらの条件を最もみたすものは、サーチ型音声案内システムであることがわかった。このシステムは、館内に設置された発信機から発せられる音声信号(赤外線信号に変換されたもの)を携帯型音声レシーバー(以下、レシーバーという)によって音声に再変換し、情報を聞くタイプである。また、このシステムでは、レシーバーを用いて信号の強弱をサーチすることで、その発信源の位置を把握することができる。
 以上のことを踏まえ、当館では、三菱プレシジョン(株)製のトーキングサイン・タイプ3を導入した。
(2)機器の特徴
 当館で使用している機器の特徴は、以下の3点である。第一は,音質である。視覚障害者にとって、耳からの情報は大変重要であり、音質の良くない不鮮明な音声は、聞き取りにくいだけでなく長時間の使用においてはかなりの疲労感を生じさせる。音質を良くするためには、録音時の音域を広く記録する必要があるので、レシーバー内蔵の音声記録用ROMカードを大容量のものに変更した。
 第二は、携帯性である。一般の音声ガイダンス機器は、ストラップにより胸元に首掛けして使用するものが多い。このタイプは、長時間の使用において首に疲労が蓄積されやすいだけでなく、かがみ込んだときに首からまっすぐ下にぶら下がってしまうため、白杖や盲導犬を利用する視覚障害者にとっては障害物になってしまう可能性が高い。そこで、携帯の疲労感をできるだけ少なくし、また必要なときだけ素早く手にすることができるよう、肩掛け式ストラップ方式を取り入れた。
 第三はレシーバーの色である。健常者,視覚障害者の別を問わず、誰でも好感イメージのある色を好むものである。また、貸出側としては、目立つ色のほうが視認性が良く、使用者に声をかけるなどの人的サービスの向上にもつながる。当館のレシーバーは,好感色でかつ視認性の良い水色のメタリックカラーである。

3 システムの特徴
(1)操作性の重視
 レシーバーは、視覚に障害をもつ方でも簡単に操作できるように、ボタンが必要最小限の数になっている。そのため、場所を探す、解説を聞く、途中で止めるといった一連の操作を片手で行うことが可能である。そのため、レシーバーをあたかもレーダーのように操作することにより、楽しみたい展示の場所やトイレなどの場所を自分で探すことができ、視覚障害者が主体的立場で博物館を楽しむことが可能となった。
(2)利用者ニーズを考慮
 レシーバーから音を聞き取る方法としては、スピーカー方式とイヤホン耳かけ式の両用とした。よって、スピーカーを使用すれば、聴覚が重要な感覚である視覚障害者にとっては、耳をふさぐことなく解説を聞くことができるので、より安心して博物館を楽しむことができる。また、できるだけ他人の目を気にせずに利用したいという方にとっては、イヤホンを使用することで周囲に音を出さずに利用できる。
(3)博物館の特徴を生かした解説
 約3,200uの床面積をもつ常設展示室や、企画展示室等の展示スペースには、30カ所に解説ポイントを設置しており、情報量の多い展示解説を提供している。また、当館は16haにおよぶ野外を有しているが、野外施設の季節毎の動物・植物に関する情報を聞くことのできる解説ポイントも設置している。
(4)誰でも楽しめる解説内容
 展示物を手で触れて楽しむ展示はもとより、手の届かないジオラマ展示やシンボル展示などを臨場感あふれる内容で紹介し、誰もが楽しくわかりやすい解説になるようにした。とりわけ、視覚障害者に対しては、展示室のイメージ等をできるだけ理解していただくために、多くの解説ポイントで効果音や動物の鳴き声をBGMとして使用した。

4 おわりに
 システムを利用した来館者に対しては、アンケートへの回答を依頼しているが、集計結果をみると、レシーバーの使いやすさや展示解説の内容については高い評価を得ており、大部分の利用者が満足していることがわかる。しかしながら、当館としては、これを「視覚障害者のためのサービス」の完成とは認識していない。現在、試験的にではあるが、このシステムを野外展示に拡張すべく研究中である。今後も、視覚障害者、健常者を問わずさまざまなモニタリングを行い、よりよい音声ガイダンスの在り方を検討していきたい。
〔引用文献〕
 高橋 淳. 2001. ミュージアムパーク茨城県自然博物館における視覚障害者対応型音声ガイダンスシステムの構築.茨城県自然博物館研究報告,(4):161-170.