全科協ニュース,Vol.32. No.6(通巻第187号)「音声・電子ガイド」特集  掲載
国立民族学博物館における「みんぱく電子ガイド」の開発
国立民族学博物館 博物館民族学研究部 栗田靖之

国立民族学博物館は、1999年から「みんぱく電子ガイド」による展示場解説を行っている。これは来館者が携帯端末を用いて展示品の前で、動画、静止画、音声による解説を受けることの出来る装置である。このような携帯解説機器が、どのような考え方にもとづいて開発されたかを紹介したい。

【システム開発のコンセプト】 
民博は1977年の開館以来、解決しなければならない課題があった。それは外国語による展示解説と、来館者の疑問にいかに答えるかということである。
 第1の課題は、解説を外国語で製作する場合、何語を用いるかが大きな問題であった。民博への外国人来館者のなかで多いのは韓国・朝鮮人であり、つづいて中国人である。それとともに英語での解説パネルも設けると、展示壁は解説パネルで一杯になってしまう。これをどうするかが困った問題であった。
 つぎに来館者からの質問の多いのは、「展示されている標本は、いまも使われているのか」、あるいは「どのようにして使うのか」、「どのようにして作るのか」といったことである。われわれがこの「みんぱく電子ガイド」を考えたとき、情報というものは、疑問を抱いたその時に、その場で答えなければならないと考えた。大半の人はその疑問を家にまで持って帰って調べるということはしないだろうということである。
 いろいろな来館者に聞いてみると、博物館で一番おもしろい見方は、専門家に案内してもらうことだという。このような要求をコンピューターを用いて実現しようと考えた。要約すると専門家の作った解説情報を、マルチメディアを用いて、来館者にパーソナルに送るということを考えたのである。
 これらがこの携帯解説機器を開発したときの基本的なコンセプトであった。

【情報の中身】
また「みんぱく電子ガイド」から送る情報にどのような性格を与えるのかについて考えた。展示を見ている来館者には、いろいろな疑問レベルがあるだろう。そこで「みんぱく電子ガイド」が提供する情報は、事典の記述程度のものということを想定した。民博には世界の民族に関する情報を15分程度の番組で提供するビデオテークがある。ここで提供されている情報は、新書版の本のようなものである。もし来館者がもっと高度の情報を知りたい場合には、民博が所蔵している長編の映画を見てもらうとよいと考えた。

【形態】
1993年から民博と松下電器株式会社とによる共同研究をおこなって開発をはじめた。完成した「みんぱく電子ガイド」の大きさは、重さは975グラムであった。画面の大きさはカー・ナビゲーション・システムを参考として6インチとした。電池の継続時間は80分である。イヤホン・ジャックが2つ付いており、音声は二人が同時に聞くことが出来る。操作ボタンは、左側に十字キーがあり、このキーを操作してメニューを選ぶ。これはゲーム機と同じ感覚で操作できるということを考えてのデザインであった。右側には2つのボタンがあり、Aボタンは「決定」を、そしてBボタンは「キャンセル」を行うものである。
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